h1. チュートリアル このページでは簡単なアプリケーションの作成を通して rroongaの操作方法を紹介します。 h2. インストール rroongaはRubyGemsでインストールできます。
!!!command_line
% sudo gem install rroonga
h2. データベースの作成 簡単なブックマークアプリケーション用のデータベースを作ってみ ます。以下のようにgroongaライブラリを読み込んでirbを起動しま す。
!!!irb
% irb --simple-prompt -rubygems -rgroonga
>>
まず、エンコーディングを設定します。ここではUTF-8を利用します。
!!!irb
>> $KCODE = "UTF-8"
=> "UTF-8"
>> Groonga::Context.default_options = {:encoding => :utf8}
=> {:encoding=>:utf8}
それでは、ファイルを指定してデータベースを作成します。
!!!irb
>> Groonga::Database.create(:path => "/tmp/bookmark.db")
=> #
ここで作成したデータベースは、これ以降、暗黙のうちに利用され ます。最初にデータベースを作成したら特に意識する必要はありま せん。 h2. テーブルの定義 groongaには以下の3種類のテーブルがあります。 - Groonga::Hash := ハッシュテーブル。主キーでレコードを管理します。キーと完全 一致するレコードを非常に高速に検索することができます。 =: - Groonga::PatriciaTrie := パトリシアトライ。ハッシュテーブルに比べて完全一致検索の速 度がやや遅いですが、前方一致検索・共通接頭辞探索などの検索 が行えます。またカーソルを用いてキーの昇降順にレコードを取 り出すことができます。 =: - Groonga::Array := 配列。主キーの存在しないテーブルです。レコードはIDによって 識別します。 =: ここではハッシュテーブルを利用して、 @Items@ という名前のテー ブルを作成します。キーは文字列とします。
!!!irb
>> Groonga::Schema.create_table("Items", :type => :hash)
=> [...]
これで @Items@ という名前のテーブルが作成できました。 定義したテーブルはGroonga.[]で参照できます。
!!!irb
>> items = Groonga["Items"]
=> #
テーブルはRubyのHashのように扱えます。 例えば、以下のように @size@ でテーブルに登録されているレコード の件数を取得できます。
!!!irb
>> items.size
=> 0
h2. レコードを追加する @Items@ テーブルにレコードを追加します。
!!!irb
>> items.add("http://ja.wikipedia.org/wiki/Ruby")
=> #
>> items.add("http://www.ruby-lang.org/ja/")
=> #
件数を確認すると確かに2件増えています。
!!!irb
>> items.size
=> 2
主キーを指定してレコードを取り出す時には以下のようにします。
!!!irb
>> items["http://ja.wikipedia.org/wiki/Ruby"]
=> #
h2. 全文検索を行う 各itemのタイトル文字列を登録して、全文検索できるようにしてみ ましょう。 まず @Items@ テーブルに @title@ という名前のカラムを追加し ます。ここでは、 @Text@ 型のデータを持つカラムとして定義 します。
!!!irb
>> Groonga::Schema.change_table("Items") do |table|
?>     table.text("title")
>>   end
=> [...]
定義したカラムは @#{テーブル名}.#{カラム名}@ という名前になります。 テーブルと同じように {Groonga.[]} で参照できます。
!!!irb
>> title_column = Groonga["Items.title"]
=> #
全文検索するために、文字列を分解して得られる各単語を格納する ためのテーブルを別途用意します。ここではTermsという名前でテー ブルを定義します。
!!!irb
>> Groonga::Schema.create_table("Terms",
?>                              :type => :patricia_trie,
?>                              :key_normalize => true,
?>                              :default_tokenizer => "TokenBigram")
ここでは、トークナイザとして:default_tokenzier => "TokenBigram" を指定しています。トークナイザとは文字列を 単語に分解するオブジェクトのことです。デフォルトではトークナ イザは指定されていません。全文検索を利用するためにはトークナ イザを指定する必要があるので、ここではN-gramの一種であるバイ グラムを指定しています。 N-gramを利用した全文検索では、分解したN文字とその出現位置を利 用して全文検索を行います。N-gramのNは文字列を何文字毎に分解す るかの文字数になります。groongaは1文字で分解するユニグラム、 2文字のバイグラム、3文字のトリグラムをサポートしています。 また、大文字小文字の区別なく検索するために @:key_normalize => true@ も指定しています。 単語格納用テーブルの準備ができたので、 @Items@ テーブ ルの @title@ カラムに対するインデックスを定義します。
!!!irb
>> Groonga::Schema.change_table("Terms") do |table|
?>     table.index("Items.title")
>>   end
=> [...]
少し違和感を感じるかも知れませんが、 @Items@ テーブル のカラムに対するインデックスは、 @Terms@ テーブルのカ ラムとして定義します。 @Items@ にレコードが登録されると、その中に含まれる単 語に該当するレコードが @Terms@ に自動的に追加されるよ うになります。 @Terms@ は、文書に含まれる語彙に相当する、やや特殊な テーブルだと言えます。しかし、他のテーブルと同様に語彙テーブ ルには自由にカラムを追加し、単語毎の様々な属性を管理すること ができます。これはある種の検索処理を行う際には非常に便利に機 能します。 これでテーブルの定義は完了です。 先ほど登録した各レコードの @title@ カラムに値をセットします。
!!!irb
>> items["http://ja.wikipedia.org/wiki/Ruby"].title = "Ruby"
=> "Ruby"
>> items["http://www.ruby-lang.org/ja/"].title = "オブジェクトスクリプト言語Ruby"
"オブジェクトスクリプト言語Ruby"
以下のようにして検索することができます。
!!!irb
>> ruby_items = items.select {|record| record.title =~ "Ruby"}
=> #>
検索結果はGroonga::Hashで返されます。ハッシュのキーに見つかっ た @Items@ のレコードが入っています。
!!!irb
>> ruby_items.collect {|record| record.key.key}
=> ["http://ja.wikipedia.org/wiki/Ruby", "http://www.ruby-lang.org/ja/"]
上の例では @record.key@ で @Items@ のレコードを取得して、 さらにそのキーを指定して( @record.key.key@ )で @Items@ のキーを返しています。 @record["_key"]@ でアクセスすると自動的に参照しているレコード を辿っていき、参照先のキーにアクセスできます。
!!!irb
>> ruby_items.collect {|record| record["_key"]}
=> ["http://ja.wikipedia.org/wiki/Ruby", "http://www.ruby-lang.org/ja/"]
h2. マルチユーザ向けのブックマークアプリケーション ここまでで作った単機能のアプリケーションをもう少し拡張して、 複数のユーザが、それぞれにコメントを記入できるブックマークア プリケーションにしてみましょう。 まず、ユーザ情報とコメント情報を格納するテーブルを追加して、 下図のようなテーブル構成にします。 !http://qwik.jp/senna/senna2.files/rect4605.png! まず、 @Users@ テーブルを追加します。
!!!irb
>> Groonga::Schema.create_table("Users", :type => :hash) do |table|
?>     table.text("name")
>>   end
=> [...]
次に、 @Comments@ テーブルを追加します。
!!!irb
>> Groonga::Schema.create_table("Comments") do |table|
?>     table.reference("item")
>>   table.reference("author", "Users")
>>   table.text("content")
>>   table.time("issued")
>>   end
=> [...]
@Comments@ テーブルの @content@ カラムを全文検索できる ようにインデックスを定義します。
!!!irb
>> Groonga::Schema.change_table("Terms") do |table|
?>     table.index("Comments.content")
>>   end
=> [...]
これでテーブルが定義できました。 続いてユーザを何人か追加します。
!!!irb
>> users = Groonga["Users"]
=> #
>> users.add("moritan", :name => "モリタン")
=> #
>> users.add("taporobo", :name => "タポロボ")
=> #
次に、実際にユーザがブックマークを貼る時の処理を実行してみま しょう。 ユーザ @moritan@ が、Ruby関連のとあるページをブックマークしたと 想定します。 まず対象のページが @Items@ テーブルに登録済かどうか調 べます。
!!!irb
>> items.has_key?("http://www.rubyist.net/~matz/")
=> false
未登録なのでまず当該ページを @Items@ に登録します。
!!!irb
>> items.add("http://www.rubyist.net/~matz/",
?>           :title => "Matzにっき")
=> #
次に、登録したitemを @item@ カラムの値に指定して @Comments@ にレコードを登録します。
!!!irb
>> require "time"
=> true
>> comments = Groonga["Comments"]
=> #
>> comments.add(:item => "http://www.rubyist.net/~matz/",
?>              :author => "moritan",
?>              :content => "Ruby Matz",
?>              :issued => Time.parse("2010-11-20T18:01:22+09:00"))
=> #
h2. メソッド化 上記の一連の手続きをメソッドにまとめてみます。
!!!irb
>> @items = items
=> #
>> @comments = comments
=> #
>> def add_bookmark(url, title, author, content, issued)
>>   item = @items[url] || @items.add(url, :title => title)
>>   @comments.add(:item => item,
?>                 :author => author,
?>                 :content => content,
?>                 :issued => issued)
>>   end
=> nil
@items@ と @comments@ をインスタンス変数に代入しているのはメ ソッド内からでも見えるようにするためです。 @add_bookmark@ は以下のような手順を実行しています。 * @Items@ テーブルに該当ページのレコードがあるかどうか調べる。 * レコードがなければ追加する。 * @Comments@ テーブルにレコードを登録する。 作成したメソッドを呼び出していくつかブックマークを登録してみ ましょう。
!!!irb
>> add_bookmark("http://jp.rubyist.net/magazine/",
?>              "Rubyist Magazine - るびま", "moritan", "Ruby 記事",
?>              Time.parse("2010-10-07T14:18:28+09:00"))
=> #
>> add_bookmark("http://groonga.rubyforge.org/",
?>              "Rubyでgroonga使って全文検索 - ラングバ", "taporobo",
?>              "Ruby groonga 全文検索",
?>              Time.parse("2010-11-11T12:39:59+09:00"))
=> #
>> add_bookmark("http://www.rubyist.net/~matz/",
?>              "Matz日記", "taporobo", "Ruby 日記",
?>              Time.parse("2010-07-28T20:46:23+09:00"))
=> #
h2. 全文検索その2 登録したレコードに対して全文検索を実行してみます。
!!!irb
>> records = comments.select do |record|
?>     record["content"] =~ "Ruby"
>>   end
=> #
>> records.each do |record|
?>     comment = record.value
>>   p [comment.id,
?>       comment.issued,
?>       comment.item.title,
?>       comment.author.name,
?>       comment.content]
>>   end
[1, Sat Nov 20 18:01:22 +0900 2010, "Matzにっき", "モリタン", "Ruby Matz"]
[2, Thu Oct 07 14:18:28 +0900 2010, "Rubyist Magazine - るびま", "モリタン", "Ruby 記事"]
[3, Thu Nov 11 12:39:59 +0900 2010, "Rubyでgroonga使って全文検索 - ラングバ", "タポロボ", "Ruby groonga 全文検索検"]
[4, Wed Jul 28 20:46:23 +0900 2010, "Matzにっき", "タポロボ", "Ruby 日記"]
カラム名と同じメソッドでカラムへのアクセスできます。複合デー タ型の要素も再帰的に辿ることができます。(同様の出力を普通の RDBで実現するためには、 @Items@ テーブル、 @Comments@ テーブル、 @Users@ テーブルのJOIN操作が 必要になります。) 上の式の中で、肝心の検索処理は、第一引数の式を評価する時点で 完了していて、レコードセットオブジェクトとしてメモリに蓄積さ れています。
!!!irb
>> records
#>
レコードセットは、出力する前に様々に加工することができます。 以下は、日付で降順にソートしてから出力した例です。
!!!irb
>> records.sort([{:key => "issued", :order => "descending"}]).each do |record|
?>     comment = record.key
>>   p [comment.id,
?>       comment.issued,
?>       comment.item.title,
?>       comment.author.name,
?>       comment.content]
>>   end
[1, Sat Nov 20 18:01:22 +0900 2010, "Matzにっき", "モリタン", "Ruby Matz"]
[3, Thu Nov 11 12:39:59 +0900 2010, "Rubyでgroonga使って全文検索 - ラングバ", "タポロボ", "Ruby groonga 全文検索"]
[2, Thu Oct 07 14:18:28 +0900 2010, "Rubyist Magazine - るびま", "モリタン", "Ruby 記事"]
[4, Wed Jul 28 20:46:23 +0900 2010, "Matzにっき, "タポロボ", "Ruby 日記"]
=> [...]
同じitemが何度も出てくると検索結果が見にくいので、item毎にグ ループ化してみます。
!!!irb
>> records.group("item").each do |record|
?>     item = record.key
>>   p [record.n_sub_records,
?>       item.key,
?>       item.title]
>>   end
[2, "http://www.rubyist.net/~matz/", "Matzにっき"]
[1, "http://jp.rubyist.net/magazine/", "Rubyist Magazine - るびま"]
[1, "http://groonga.rubyforge.org/", "Rubyでgroonga使って全文検索 - ラングバ"]
=> nil
@n_sub_records@ というのはグループ化した単位に含まれるレコード の件数を示します。SQLで言えば、GROUP BY句を含むクエリのcount 関数のような働きです。 h2. 少し複雑な検索 さらに実用的な検索について考えてみましょう。 ブックマークが大量に蓄積されるに従って、より的確に適合度を算 出する必要性に迫られます。 今のところ検索対象として利用できるのは @Items.title@ と @Comments.content@ ですが、 @Items.title@ は 元ページから得られるやや信頼できる情報なのに対して、 @Comments.content@ はブックマークユーザが任意に設定で きる情報で、やや信憑性に乏しいと言えます。しかし、再現率を確 保するためにはユーザのコメントも是非対象に含めたいところです。 そこで、以下のようなポリシーで検索を行うことにします。 * @Items.title@ か @Comments.content@ のいずれ かにマッチするitemを検索する。 * ただし、 @Items.title@ にマッチしたレコードはスコア を10倍重み付けする。 * 同一のitemに対して、キーワードにマッチする @comment@ が複数存在した場合は、それぞれの @comment@ のスコアの 和を、該当するitemのスコアとする。 以下のようにして、commentとitemとそれぞれに対する検索結果を求 めます。
!!!irb
>> ruby_comments = @comments.select {|record| record.content =~ "Ruby"}
=> #
>> ruby_items = @items.select do |record|
?>     target = record.match_target do |match_record|
?>       match_record.title * 10
>>     end
>>   target =~ "Ruby"
>>   end
#>
_ruby_comments_の結果をitem毎にグループ化し、_ruby_items_と unionして出力します。
!!!irb
>> ruby_items = ruby_comments.group("item").union!(ruby_items)
#>
>> ruby_items.sort([{:key => "_score", :order => "descending"}]).each do |record|
>>   p [record.score, record.title]
>> end
[10, "Rubyist Magazine - るびま"]
[10, "Ruby"]
[10, "Rubyでgroonga使って全文検索 - ラングバ"]
[10, "オブジェクトスクリプト言語Ruby"]
[2, "Matzにっき"]
これで目的の結果が得られました。